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製造業の基幹システム再構築は、規模も影響範囲も大きく、失敗すると現場が止まるリスクがあります。だからこそ「何を作るか」より先に「どう要件を定めるか」が最重要です。実務では、基幹の成否は開発工程ではなく、要件定義で9割決まると言っても過言ではありません。
要件定義が弱いと、稼働後に「現場が回らない」「結局Excelが増えた」「追加改修が止まらない」といった事態になりやすく、費用も期間も膨らみます。逆に、要件定義で業務とデータと運用ルールが整理できれば、段階導入や投資分散、ベンダーの役割分担も現実的になり、成功確率が上がります。
本記事では、製造業プロジェクトで要件定義が成功の鍵になる理由と、失敗しない進め方、押さえるべき論点、成果物のイメージを具体的に解説します。

なぜ要件定義で9割決まるのか(製造業特有の理由)
製造業の業務は、例外処理の集合体です。欠品、分納、緊急差し込み、外注工程、不良・再検、段取り替え、BOM変更、ロット分割、製番切替…。これらの“例外”が日々発生し、しかも会社・工場・ラインごとに運用が違います。
この例外を要件定義で拾い切れないと、稼働後に「その処理はシステム外で」となり、Excelや紙が増殖してデータが分散します。結果として、在庫・原価・納期の数字が信用できず、DXの土台が崩れます。
さらに基幹は関係部門が多く、受注・購買・生産・品質・物流・経理まで連鎖します。要件が曖昧なまま開発に入るほど、後半で“手戻り”が爆発し、費用と期間が膨らみます。だから、要件定義が基幹再構築の9割を決めます。
要件定義で必ず押さえるべき5つの論点
要件定義を「画面の話」だと思うと失敗します。製造業基幹の要件定義は、次の5つを決める作業です。
1)業務フローと責任分界(誰が、いつ、何をするか)
入力タイミング、承認、例外時の判断、修正権限、締め処理など。口伝の運用を“仕組み”に落とし込みます。
2)データ構造(品目体系/BOM/工程/製番/ロット/ロケーション)
ここが曖昧だと在庫も原価も合いません。将来の拡張も難しくなります。
3)例外処理(不良、返品、手直し、外注、分納、欠品)
成功する要件定義は、例外を“先に”潰します。ここが漏れると稼働後にExcelが増えます。
4)帳票・締め(現場帳票、検査成績表、納品書、請求、月次締め)
帳票は運用そのものです。必要な帳票の定義と、締め処理の手順を詰めます。
5)連携(会計、EDI、倉庫、現場端末、IoT、取引先提出)
連携は“つなぐだけ”ではなく、タイミング、整合性、エラー時の扱い、再送まで定義が必要です。

失敗する要件定義の共通点(これを避けるだけで成功率が上がる)
失敗する要件定義にはパターンがあります。
・現場を巻き込まず、管理部門やITだけで決める(例外が漏れる)
・理想の業務フローだけ描き、現実の例外を無視する
・データ移行やマスタ整備を後回しにする(稼働直前に炎上)
・帳票や締めを軽視する(稼働後に現場が止まる)
・「全部入り」を目指して範囲が膨らむ(期間も費用も膨張)
これらを避けるだけでも成功確率は大きく上がります。
成功する要件定義の進め方(段階導入の前提を作る)
中小製造業で成功率が高い進め方は、次の順序です。
ステップ1:現状棚卸し(業務フロー・帳票・例外処理・責任分界)
ステップ2:優先順位付け(在庫・原価・納期など経営に効く領域から)
ステップ3:ToBeを最小構成で設計(まず“回る”形を定義)
ステップ4:成果物レビュー(現場で回るか/例外が潰れているか)
ステップ5:段階導入計画(どこから稼働し、どう拡張するか)
ここで重要なのは、要件定義を“完璧に固める”ことではなく、「最小構成で回るToBe」と「段階導入の順序」を決めることです。これができると、開発をどこに依頼してもブレにくくなります。

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要件定義で作るべき成果物(最低限これがあれば迷子にならない)
要件定義の成果物は、後工程の“地図”です。最低限、次が揃うと強いです。
・業務フロー図(AsIs/ToBe、例外含む)
・要件一覧(機能要件・非機能要件・優先度)
・データ定義(マスタ、トランザクション、コード体系)
・画面/帳票一覧(入出力、締め、承認)
・運用設計(権限、ログ、責任分界、締め手順)
・連携一覧(対象、方式、タイミング、例外時の扱い)
これが揃うと、見積の妥当性判断も容易になり、ベンダー比較も“価格だけ”から脱却できます。
よくある質問(FAQ)
Q1. 要件定義だけ依頼して、開発は別会社でも良いですか?
A. 可能です。要件定義で業務とデータ、段階導入の順序を整理しておけば、開発の役割分担がしやすくなります。
Q2. 要件定義にはどれくらい時間がかかりますか?
A. 範囲と現場の稼働状況によりますが、例外処理と帳票・締めまで含めて整理するほど価値が高くなります。急ぎの場合も“最小構成”で段階的に進める設計が有効です。
Q3. 要件定義で一番大事なポイントは何ですか?
A. 例外処理を漏らさないこと、データの持ち方(品目/BOM/工程/製番/ロット)を整理すること、責任分界と入力タイミングを決めることです。
