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製造業の基幹システムは、受注・生産・購買・在庫・工程・原価・品質・出荷・請求といった中核業務をつなぐ土台です。長年安定稼働しているほど「まだ動いているから大丈夫」となりやすい一方、システムの老朽化は静かに進行します。いわゆるレガシー基幹システムを使い続けると、ある日突然の障害だけでなく、納期・品質・利益率・採用力など、経営に直結する損失が積み上がります。
本記事では、製造業で実際に起きている“よくある問題”を軸に、レガシー基幹を使い続けるリスクと、現実的な打ち手(全面刷新だけに限らない)を分かりやすく整理します。
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リスク1:改修ができない(遅い・高い・怖い)状態になる
レガシー化でまず顕在化するのが「改善が止まる」ことです。項目追加や帳票変更など軽微な要望でも、見積が高い、納期が長い、仕様確認に時間がかかる、改修すると別の機能が壊れる――こうした状態が増えます。
原因は、長年の継ぎ足し改修で設計思想が崩れ、影響範囲が読めないこと、設計書が更新されていないこと、テスト環境やデータが整っていないことなどが重なるためです。結果として現場は「改修を諦める」→「Excelで回避する」→「データが分散して余計に改修が難しい」という悪循環に入ります。ここが“静かに破綻が進む”最初のサインです。
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リスク2:属人化が進み、人が変わると回らない
レガシー基幹は運用ルールが口伝になりやすく、「締め処理はベテランが手で直す」「例外は担当者が帳尻を合わせる」「納期調整は経験者が頭で判断する」といった属人化が残りがちです。
人手不足の時代、この属人化は“いつか改善する課題”ではなく、突然の欠員で操業に影響する経営リスクです。特に製造業の基幹は月次締めや在庫調整、出荷・請求に直結するため、担当者不在で止まると取引先対応コストも一気に増えます。属人化が進んでいる会社ほど、まず業務ルールと例外処理を見える化し、システムと運用の両面で標準化する必要があります。
リスク3:在庫・原価・納期の数字が信用できず、利益が読めなくなる
レガシー基幹を使い続ける問題は「古い」こと自体ではなく、現場実態とのズレが広がることです。
理論在庫と実在庫が合わない、仕掛の所在が追えない、製番別原価が取れない、歩留まりや不良・返品の扱いが曖昧、BOM変更が反映されない――こうした状態は、利益率の低下や見積精度の悪化につながります。
さらに納期回答が属人的になると、短納期案件で無理をして現場負荷が上がり、品質・クレームリスクも増えます。「数字が信用できない」は、単なるITの問題ではなく、経営の意思決定が不安定になる問題です。
リスク4:データ分散でDXが進まない(現場改善の時間が奪われる)
レガシー基幹がボトルネックになると、現場はExcelや紙で回避し始めます。受注は基幹、進捗はホワイトボード、実績は紙日報、在庫は現場Excel、品質は別台帳…と分散し、集計・会議資料づくりが増えます。
本来、DXは「現場の改善を加速する仕組み」ですが、データ分散が進むと改善のための時間が集計に消え、改善が止まります。さらに、データが一元化されていないため、IoTやBI、AI活用に進もうとしても土台が整わず、効果が出にくくなります。DXが進まない本当の理由は、ツール不足ではなく“基幹と運用のズレ”であるケースが多いです。
リスク5:セキュリティ・BCP・サポート期限が経営リスクになる
レガシー基幹は、OS・DB・ミドルウェア・サーバー機器などのサポート期限が切れている、もしくは近いケースが珍しくありません。サポート外の環境は、脆弱性対応が難しく、障害時の復旧も属人的になりやすいです。
また、バックアップの自動化や復旧手順、代替運用が整っていないと、障害や災害、サイバー被害の際に操業停止が長期化します。製造業では「止まる」ことの損失が大きく、納期遅延・違約・取引停止にまでつながり得ます。セキュリティとBCPは、IT部門だけの課題ではなく、経営の最優先事項です。
「まだ動くから」で先送りすると損する理由(コストは後ろ倒しほど増える)
レガシー基幹の問題は、急に発生するのではなく“静かに積み上がる”ことです。改修が止まり、回避策が増え、データが分散し、属人化が深まり、数字が信用できなくなる。この状態で障害が起きると、緊急対応(復旧・暫定運用・手作業・取引先対応)が重なり、結果として「計画的に刷新するより高くつく」ケースが多いです。
また、刷新を決断しても、現行仕様がブラックボックス化しているほど、要件定義に時間がかかり、移行も難しくなります。だからこそ、止まる前に“現状診断と優先順位付け”を行うことが、最も合理的なコスト削減策になります。
現実的な解決策:全面刷新だけではなく「段階導入」でリスクを下げる
「基幹刷新=全面入れ替え」と考えると、費用も期間も大きく見えてしまい、結局先送りになりがちです。現実的には、重要領域から段階的に置き換える進め方が有効です。
ステップ1:現状棚卸し(業務フロー・例外処理・帳票・責任分界)
ステップ2:優先順位付け(在庫・原価・納期など経営に効く領域から)
ステップ3:最小構成で稼働(まず使える状態にして定着)
ステップ4:拡張(連携・ログ強化・周辺業務へ展開)
この進め方なら、初期投資を抑えながら、止まるリスクと属人化リスクを確実に減らしていけます。

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よくある質問(FAQ)
Q1. レガシー基幹のままでも運用で何とかなりませんか?
A. 一時的には可能ですが、回避策(Excel・手作業)が増えるほど属人化と分散が進み、障害時の損失と緊急対応コストが膨らみやすくなります。
Q2. 全面刷新ではなく、一部だけ入れ替えることはできますか?
A. 可能です。重要領域から段階導入する方が、費用とリスクを抑えやすく、現場定着もしやすいです。
Q3. まず何から相談すべきですか?
A. 現状業務の棚卸しと、在庫・原価・納期など“経営に効く領域”の優先順位付けから始めるのが現実的です。
