現在は、月額で利用できるクラウド型の在庫管理SaaSから、パッケージ、オンプレミス、自社専用Webシステム、テンプレート型カスタマイズ開発、WMSまで多くの選択肢があります。
しかし、クラウドだから優れている、オンプレミスだから古い、個別開発だから高機能という単純な比較では、自社に適したシステムを判断できません。
重要なのは、
- 現在どのように在庫を管理しているのか
- 何を改善したいのか
- 既製サービスの標準機能で業務を実現できるか
- 自社独自の入出庫ルールや帳票があるか
- ExcelやAccessの既存データをどう引き継ぐか
- POS、EC、販売管理、基幹システムとの連携が必要か
- 今後どこまで業務を拡張する予定か
を整理したうえで方式を選ぶことです。
標準的な商品管理、入出庫、棚卸しだけであれば、既製のクラウドSaaSで十分な企業もあります。
一方、独自の商品項目、特殊な入出庫処理、自社帳票、複数倉庫、Excel・Accessとの連携、既存基幹システムとのデータ連携などが必要な企業では、SaaSへ業務を合わせるより、テンプレート型カスタマイズ開発や個別開発の方が適している場合があります。
この記事では、クラウド在庫管理システムの基本から、SaaS、Webシステム、オンプレミス、パッケージ、テンプレート型、フルスクラッチ開発の違い、必要な機能、連携、費用、導入手順まで整理します。
単なる「おすすめクラウド製品のランキング」ではなく、自社は既製サービスで十分なのか、それともカスタマイズが必要なのかを判断するための基準として活用してください。

クラウド在庫管理システムとは?基本的な仕組みを解説
クラウド在庫管理システムとは、商品、原材料、部品、備品などの在庫情報をサーバー上で管理し、パソコン、タブレット、スマートフォンなどから利用できる在庫管理システムです。
主に、
- 商品・品目マスタ
- 入庫
- 出庫
- 在庫一覧
- 在庫移動
- 棚卸し
- 入出庫履歴
- 倉庫・ロケーション管理
- CSV入出力
- 帳票
- 権限管理
などの機能を利用します。
従来、1台のパソコンに保存したExcelファイルやAccessデータベースだけで在庫管理を行っている場合、担当者以外から最新情報を確認しにくいことがあります。
クラウドまたはWebシステム化することで、権限を持つ利用者が同じデータを参照できるようになり、複数の担当者、倉庫、店舗、営業所などで在庫情報を共有しやすくなります。
ただし、「クラウド化すれば自動的に在庫が正しくなる」わけではありません。
入庫や出庫を登録し忘れれば、システム上の在庫と実在庫には差が生じます。
商品コードや単位が統一されていなければ、クラウドへ移行してもデータの問題は残ります。
そのため、クラウド在庫管理システムの導入では、システム選定だけでなく、現在の在庫管理ルールや業務フローの整理も重要です。
クラウド型・SaaS・Webシステムは同じものではない
「クラウド在庫管理システム」「SaaS」「Webシステム」は混同されやすい言葉ですが、完全に同じ意味ではありません。
SaaSは、サービス提供会社が用意したシステムを複数の利用企業がサービスとして利用する形態です。
利用企業はアカウントを契約し、ブラウザやアプリからアクセスします。
サーバー、OS、アプリケーションの更新などをサービス提供会社側が管理するケースが一般的です。
一方、Webシステムは「ブラウザから利用できるシステム」という技術的な仕組みを指します。
WebシステムをAWSなどのクラウド環境へ構築することもできますし、自社サーバーへ構築することもできます。
つまり、
- SaaS=あらかじめ用意されたサービスを利用する方式
- クラウド上の個別Webシステム=自社向けに構築したWebシステムをクラウド環境で動かす方式
と考えると分かりやすいでしょう。
SaaS型クラウド在庫管理システムの特徴
SaaS型の大きなメリットは、比較的短期間で利用を開始しやすいことです。
サーバーを新しく購入して構築する必要がなく、商品マスタ、利用者、倉庫などを設定すれば使い始められる製品があります。
アップデートやインフラの管理をサービス提供会社が行うため、自社でサーバー保守の担当者を持たなくても利用しやすいこともメリットです。
一方で、標準機能を多くの企業が共通して利用する仕組みであるため、自社独自の業務へ自由に変更できるとは限りません。
例えば、
- 商品ごとに独自の管理項目が多数ある
- 入庫や出庫の処理方法が特殊
- 独自の承認フローがある
- 現在利用している帳票をそのまま残したい
- 特殊なCSV形式を利用している
- 既存の基幹システムと独自連携が必要
といった要件では、SaaSだけで対応できない場合があります。
そのためSaaSの導入では、「機能が多いか」ではなく、自社業務を標準機能へ無理なく合わせられるかを確認することが重要です。
SaaSと自社専用Webシステムを比較
| 比較項目 | SaaS型 | 自社専用Webシステム |
|---|---|---|
| 導入開始 | 比較的早い | 設計・開発期間が必要 |
| 初期費用 | 比較的抑えやすい | 開発費が必要 |
| 月額費用 | ユーザー・機能等に応じて発生 | サーバー・保守等が発生 |
| 標準機能 | あらかじめ用意 | 自社向けに設計可能 |
| カスタマイズ | 制限される場合がある | 比較的自由 |
| 自社帳票 | 対応範囲を確認 | 開発可能 |
| CSV・外部連携 | 製品仕様に依存 | 要件に合わせて設計可能 |
| 保守 | 主に提供会社 | 開発会社・自社で実施 |
| バージョンアップ | サービス側で実施するケースが多い | 個別に管理 |
| 向いている企業 | 標準業務へ合わせやすい企業 | 独自業務が多い企業 |
どちらが優れているという比較ではありません。
標準的な在庫管理業務ならSaaSの方が合理的な場合があります。
自社固有の業務が競争力や運用上重要である場合には、自社専用Webシステムの方が適している可能性があります。
オンプレミス・パッケージ・個別開発との違い
オンプレミス型
オンプレミス型とは、自社または指定するデータセンターなどにサーバーを用意してシステムを運用する方式です。
自社のセキュリティポリシーやネットワーク構成に合わせて設計しやすく、社内システムとの連携方法を細かく制御できることがあります。
一方で、
- サーバー
- OS
- データベース
- バックアップ
- 監視
- 障害対応
- セキュリティ更新
- ハードウェア更新
などを考える必要があります。
クラウドと比較するとインフラ管理の負担が大きくなりやすいため、オンプレミスを選択する明確な理由があるかを確認することが重要です。
パッケージ型
パッケージ型は、在庫管理に必要な機能があらかじめ組み込まれたソフトウェアを導入する方式です。
業種ごとの標準的な業務が組み込まれている製品もあり、自社業務が製品仕様に近い場合には効率よく導入できます。
一方、パッケージに存在しない機能を追加したい場合は、
- オプション
- 設定変更
- アドオン
- 追加開発
などが必要になることがあります。
導入時には、本体価格だけでなく、追加機能、保守、バージョンアップ、データ移行なども確認します。
フルスクラッチ個別開発
フルスクラッチ開発は、企業ごとの業務要件に合わせて一からシステムを設計・開発する方法です。
画面、データ項目、処理、帳票、連携などを柔軟に設計できます。
一方で、すべてをゼロから作るため、機能数が増えるほど開発期間と費用も増えます。
また、自由度が高いからといって、現在の業務をそのまま全てシステムへ再現することが正解とは限りません。
不要な業務や重複作業までシステム化すると、高額で複雑なシステムになる可能性があります。
フルスクラッチ開発では、要件定義の前に業務整理を行うことが特に重要です。
在庫管理システムを自作する場合
Excel、Access、ノーコードツール、自社エンジニアによるWeb開発などで在庫管理システムを自作する方法もあります。
小規模かつ単純な業務であれば、有効な選択肢です。
ただし自作する場合には、開発時だけでなく、
- 不具合修正
- バックアップ
- セキュリティ
- 権限管理
- データ移行
- 仕様変更
- 担当者退職
- OS・ブラウザ等の環境変化
まで考える必要があります。
「無料で作れる」「社内で作れば安い」と単純に判断せず、数年間維持するための体制まで確認してください。
SaaSでもフルスクラッチでもない「テンプレート型カスタマイズ開発」
クラウド在庫管理を検討している企業の中には、
- 「月額SaaSでは自社業務に合わない」
- 「既製パッケージでは不要な機能が多い」
- 「Excelでは限界だが、フルスクラッチほど大掛かりにはしたくない」
という企業があります。
このような場合の選択肢が、テンプレート型カスタマイズ開発です。
在庫管理で多くの企業に共通する、
- 商品・品目マスタ
- 倉庫
- ロケーション
- 入庫
- 出庫
- 在庫一覧
- 在庫移動
- 入出庫履歴
- 棚卸し
- CSVインポート
- CSVエクスポート
- 帳票
- 権限管理
などをあらかじめ共通機能として用意します。
そのうえで、会社ごとに異なる、
- 管理項目
- 入出庫ルール
- 帳票
- CSV
- バーコード
- ロット
- 使用期限・賞味期限
- 外部システム連携
などを必要な範囲だけ調整します。
フルスクラッチのように毎回すべてを一から開発するのではなく、SaaSのように業務を完全に標準機能へ合わせるのでもない、中間的な考え方です。
Mactism Quick Pack 在庫管理とは
マクティズムでは、このテンプレート型カスタマイズ方式による「Mactism Quick Pack 在庫管理」を提供しています。
対象としているのは、例えば次のような企業です。
- Excelによる在庫管理が複雑になっている
- Excelファイルが複数存在している
- Accessで作った在庫管理が古くなっている
- 在庫数が合わず確認作業が多い
- 棚卸しに時間がかかっている
- 倉庫やロケーション別の在庫が見えない
- SaaSを比較したが業務に合わない
- 独自の帳票やCSVを使いたい
- 必要な機能だけでシンプルに作りたい
- 将来的に発注・販売管理まで広げたい
逆に、標準的な在庫管理だけで十分で、低価格な月額サービスで問題なく運用できる企業には、一般的なSaaSの方が適している可能性があります。
マクティズムでは、最初から開発ありきで判断するのではなく、現在の管理方法を確認し、既製サービスで対応できるのか、テンプレート型が適しているのか、より大規模な開発が必要なのかを整理することを重視しています。
在庫管理システムの詳細を見る
在庫管理をExcelで続けていると、入出庫履歴、棚卸、在庫差異、複数人利用で限界が出やすくなります。Excel修正だけでなく、在庫管理システム化も相談できます。
クラウド在庫管理システムで管理できる基本業務
商品・品目マスタ
在庫管理の基礎になるのが商品・品目マスタです。
一般的には、
- 商品コード
- 商品名
- 分類
- 単位
- 規格
- 仕入先
- 保管場所
などを管理します。
製造業では部品や原材料の情報、小売・卸売業では販売商品情報など、企業によって必要な項目が異なります。
既存のExcelに多数の独自項目がある場合には、本当にすべて必要なのか整理してから移行します。
入庫管理
商品、原材料、部品などが入ってきた際に数量を登録します。
入庫理由として、
- 仕入
- 生産完了
- 返品
- 倉庫間移動
- 在庫調整
などを区別する場合もあります。
単純に数量だけ増やすのではなく、「なぜ在庫が増えたのか」を履歴として残せる設計にすると、後から在庫差異を調査しやすくなります。
出庫管理
販売、出荷、社内使用、生産投入、廃棄などによって在庫が減少した際に登録します。
出庫についても、処理理由を区別しておくことが重要です。
例えば製造業では「製造工程で使用した出庫」と「顧客へ出荷した出庫」は意味が異なります。
自社業務に必要な区分を整理します。
棚卸し
棚卸しでは、システム上の在庫数量と実際に存在する数量を比較します。
差異がある場合には、その数量を調整するだけではなく、原因を確認します。
入庫漏れ、出庫漏れ、破損、廃棄、誤入力など、原因を記録できるようにすると改善活動にも利用できます。
在庫移動
複数倉庫や倉庫内ロケーションを利用している場合、どこからどこへ在庫を移動したのかを記録します。
倉庫Aから倉庫Bへ移動する場合や、同じ倉庫内で棚番号を変更する場合などがあります。
単純な在庫数だけでなく、保管場所を管理したい企業では重要な機能です。
バーコード・QRコード・ハンディ端末は必要か
バーコードやQRコードを利用すると、商品コードを手入力する作業を減らせます。
入庫、出庫、棚卸しなどの現場で有効です。
ただし、すべての企業が最初からハンディターミナルを導入する必要はありません。
商品数や入出庫件数が少ない企業では、パソコンやタブレットによる入力だけで十分な場合もあります。
バーコードを導入する場合には、
- 既存の商品コードを利用するか
- 独自コードを発行するか
- ラベルを発行するか
- どこに貼付するか
- スマートフォンで読むか
- 専用機器を使うか
を整理します。
「導入できる機能」と「今すぐ必要な機能」は別に考えることが重要です。
Mactism Quick Packでも、まず基本的な入出庫・棚卸しから始め、必要になった段階でバーコードやハンディ端末を追加する考え方が可能です。
リアルタイム共有と一元管理のメリット
クラウドまたはWeb型の在庫管理システムでは、権限を持つ複数利用者が共通のデータを参照できます。
例えば、
倉庫担当者が入庫を登録 → 営業担当者が現在庫を確認 → 受注可否を判断
という流れを実現できます。
従来、
- 「倉庫へ電話する」
- 「Excelをメールでもらう」
- 「担当者に在庫を確認する」
といった作業が発生していた企業では、確認作業を減らせる可能性があります。
複数店舗や複数倉庫を持っている場合には、
- 拠点別在庫
- 全社在庫
- 倉庫間移動
を同じシステム上で管理できます。
ただし、リアルタイム共有を成立させるには、現場が入出庫を正しく登録する運用が必要です。
システムだけでなく、入力ルールと責任者を決めておくことが重要です。
クラウド導入で期待できる業務効率化
クラウド化による効果は企業によって異なりますが、例えば次のような改善が考えられます。
- 複数Excelの集計を減らす
- 最新ファイルを探す作業を減らす
- 在庫照会の電話やメールを減らす
- 入出庫情報を共有する
- 棚卸し結果を集計しやすくする
- 在庫履歴を確認しやすくする
- 複数拠点の在庫をまとめて確認する
- CSVによるデータ受け渡しを効率化する
ただし、「クラウドを導入すれば何%削減できる」と一律に判断することはできません。
導入効果を確認する場合には、導入前に、
- 棚卸しにかかる時間
- Excel集計時間
- 在庫照会回数
- 在庫差異
- 欠品件数
- 入力ミス
- 出荷ミス
などを記録しておきます。
導入後に同じ指標を比較することで、費用対効果を確認できます。
クラウド在庫管理のデメリットと注意点
インターネット環境への依存
クラウド上のシステムは、通常インターネット接続を利用します。
通信障害が発生した場合にどこまで業務を継続できるか確認が必要です。
特に倉庫や工場では、利用場所の無線LANやモバイル通信環境も確認します。
SaaSではカスタマイズできない場合がある
クラウドSaaSは短期間で利用しやすい反面、標準仕様が決まっています。
自社独自の画面、処理、帳票などを自由に変更できない製品があります。
その場合、
「システムへ業務を合わせる」
のか、
「自社業務に合わせてシステムを作る」
のかを判断します。
ベンダー変更時のデータ移行
SaaSを選ぶ場合には、将来サービスを変更するときにデータをどの形式で出力できるか確認しておくことも重要です。
商品マスタだけではなく、
- 在庫数
- 入出庫履歴
- 棚卸履歴
- ロット
- ロケーション
など、必要なデータを取り出せるか確認します。
セキュリティ
クラウドかオンプレミスかに関係なく、セキュリティ確認は必要です。
確認項目としては、
- ID・パスワード管理
- 多要素認証
- 権限設定
- 操作ログ
- バックアップ
- 通信暗号化
- 障害時の復旧方法
- データ保管方法
などがあります。
「クラウドだから危険」「クラウドだから安全」と単純に判断せず、具体的な運用と対策を確認してください。
クラウド・オンプレミス・SaaS・テンプレート型・個別開発を比較
| 評価項目 | SaaS | オンプレミス・パッケージ | テンプレート型 | フルスクラッチ |
|---|---|---|---|---|
| 導入しやすさ | 高い | 中程度 | 中〜高 | 低め |
| 初期費用 | 比較的低い | 中〜高 | 中程度 | 高い |
| 自社業務への適合 | 標準仕様中心 | 製品による | 必要部分を調整 | 高い |
| カスタマイズ | 制限あり | 製品による | 必要範囲 | 自由 |
| 保守 | ベンダー中心 | 自社・ベンダー | 開発会社 | 開発会社 |
| 独自帳票 | 制限ありの場合あり | 対応可能な製品あり | 対応可能 | 対応可能 |
| CSV連携 | 製品仕様 | 製品仕様 | 調整可能 | 設計可能 |
| 基幹連携 | API等に依存 | 製品次第 | 開発可能 | 開発可能 |
| 向いている企業 | 標準業務へ合わせられる | 製品要件に合う | SaaSでは合わない | 高度な独自要件 |
この表だけで方式を決定するのではなく、自社の業務を当てはめて判断します。
SaaSが向いている企業
次のような場合には、既製SaaSを優先的に検討してよいでしょう。
- 一般的な商品管理で十分
- 入出庫と棚卸しが中心
- 独自帳票が少ない
- 既存基幹システムとの特殊な連携がない
- 業務を標準機能へ合わせられる
- できるだけ早く利用開始したい
- 初期投資を抑えたい
このような企業に対して、無理に個別開発する必要はありません。
テンプレート型カスタマイズが向いている企業
次のような企業では、テンプレート型を検討する価値があります。
- Excelで独自の在庫管理をしている
- Accessの在庫管理をWeb化したい
- SaaSを比較したが業務に合わない
- 商品ごとに独自項目がある
- 入出庫処理が少し特殊
- 自社帳票を使いたい
- 独自CSVとの連携が必要
- 複数倉庫を自社ルールで管理したい
- 必要な機能だけをシンプルに作りたい
- 将来は発注・販売管理まで拡張したい
こうしたケースが、Mactism Quick Pack 在庫管理の主な対象です。
フルスクラッチが向いている企業
次のような場合には、テンプレート型ではなく個別開発が必要になる可能性があります。
- 業務そのものが一般的な在庫管理と大きく異なる
- 非常に多くの独自機能が必要
- 大規模な販売・生産・物流を一体化する
- 大量の既存システムと連携する
- 特殊な権限・承認・監査要件がある
- 在庫管理を含む基幹システム全体を再構築する
この場合には、「在庫管理システム」という単体システムではなく、基幹再構築として計画した方がよいこともあります。
既存のExcel・Accessからクラウドへ移行する判断基準
ExcelやAccessは悪いツールではありません。
商品数が少なく、担当者も少なく、現在の運用で困っていないのであれば、無理にシステム化する必要はありません。
一方で、次のような状態が増えてきた場合には見直しを検討します。
- Excelファイルが複数に分かれている
- 最新版が分からない
- 複数人で同時に使いにくい
- 数式やマクロが壊れる
- 更新漏れが発生する
- 棚卸し集計に時間がかかる
- 在庫数が合わない
- 倉庫別在庫が分からない
- 担当者しか操作方法を知らない
- Accessを作った担当者が退職した
- 古いAccessが新しいOffice環境で動かない
- 毎月同じCSV加工をしている
これらは、「Excelをやめるべき」という意味ではありません。
Excelを残した方が使いやすい業務もあります。
大切なのは、
- 残す
- 直す
- システム化する
を切り分けることです。
在庫管理システムの詳細を見る
在庫管理をExcelで続けていると、入出庫履歴、棚卸、在庫差異、複数人利用で限界が出やすくなります。Excel修正だけでなく、在庫管理システム化も相談できます。
Excel・Accessをすべて捨てる必要はない
システム刷新でよくある失敗の一つが、「今使っているものを全部捨てて、新しい仕組みへ置き換える」ことです。
例えば、日常的な一括データ編集はExcelの方が便利な場合があります。
現在使っている帳票形式に取引先が慣れている場合もあります。
その場合には、新しい在庫管理システムからCSVを出力し、Excelで利用する構成も可能です。
Accessについても、すべてを一度にWeb化するのではなく、在庫部分から段階的に移行する考え方があります。
マクティズムでは、Excel・Access・Webシステムのどれか一つに統一すること自体を目的にせず、業務に合わせた使い分けを検討します。
POS・EC・販売管理・基幹システムとの連携
在庫管理システム単体で完結しない企業では、既存システムとの連携が重要です。
代表的には、
- POS
- EC
- 販売管理
- 受発注
- 生産管理
- 会計
- 基幹システム
などがあります。
連携方法としては、
- API
- CSV
- データベース
- 定期バッチ
などがあります。
重要なのは、「APIがあるか」だけではありません。
どのデータを、いつ、どちらのシステムからどちらへ送るのかを決める必要があります。
商品コードとマスタを統一する
在庫連携でトラブルになりやすいのがマスタの不一致です。
例えば、
- 基幹システムの商品コード:A001
- 在庫管理の商品コード:001
- POSの商品コード:10001
のように異なっていると、そのままでは正しく連携できません。
商品コード、単位、倉庫コード、取引先コードなどを整理し、どのシステムを正とするのか決めます。
システム連携では、画面よりもマスタ設計が重要になることがあります。
EC・POS連携は本当にリアルタイムが必要か
「リアルタイム連携」という言葉は魅力的ですが、すべての企業に秒単位の同期が必要とは限りません。
1日に数回のCSV連携で十分な企業もあります。
数分ごとに同期する必要がある企業もあります。
オンライン販売で在庫切れを防ぎたい場合には、より短い間隔での連携が必要になる可能性があります。
必要以上に高度なリアルタイム連携を行うと、開発費と保守負担が増えます。
業務上必要な更新頻度を先に決めることが重要です。
ロット・期限・シリアル管理が必要な企業
食品、化粧品、部品などでは、単純な商品コードと数量だけではなく、
- ロット番号
- 賞味期限
- 使用期限
- 製造日
- シリアル番号
などを管理することがあります。
同じ商品でもロットによって在庫を分ける必要があります。
また、特定ロットがどの取引先へ出荷されたかを確認したい場合には、入庫から出庫まで履歴をつなげる必要があります。
こうした管理は企業によって差が大きいため、SaaSを選定する場合には「ロット管理あり」と書かれているだけで判断せず、自社の運用を実際に再現できるか確認します。
在庫分析・発注点・適正在庫は基本機能を整えてから
在庫管理システムでは、
- 在庫回転
- 欠品
- 滞留在庫
- 発注点
- 安全在庫
などを分析できます。
さらに高度な予測やAIを検討する企業もあります。
しかし、元になる在庫データが正確でなければ、高度な分析を追加しても十分に活用できません。
まず、
商品マスタ → 入出庫 → 棚卸し → 在庫精度
を整えることが優先です。
そのうえで必要に応じて、分析や予測機能を追加します。
企業・業種別に必要なクラウド在庫管理機能
製造業
製造業では、
- 原材料
- 部品
- 仕掛品
- 完成品
など複数種類の在庫を管理する場合があります。
必要に応じて、
- ロット
- 工程
- 生産実績
- 部品表
- 不良品
などとの関係も検討します。
在庫管理だけで解決できない場合には、生産管理システムとの連携や基幹システム全体の見直しが必要になることもあります。
卸売業
卸売では、多品種の商品を多数の取引先へ販売するケースがあります。
重要になるのは、
- 商品検索
- 倉庫別在庫
- 受注との連携
- 出荷
- 取引先
- CSV
- 販売管理連携
などです。
既存販売管理システムを残し、在庫管理だけWeb化する方法も考えられます。
小売・店舗
店舗ではPOSとの連携が重要です。
店舗販売によって在庫が減った場合、その情報を在庫へ反映します。
複数店舗では店舗別在庫と全店在庫を確認したいケースもあります。
EC事業者
ECでは、複数チャネルで同じ商品を販売している場合、在庫引当のタイミングが重要です。
ただし、利用しているECサービスによって利用可能なAPIや連携方法は異なります。
導入前に現在のサービスとの接続方法を確認してください。
倉庫・物流
倉庫業務では、
- 入荷
- 検品
- 棚入れ
- ロケーション
- ピッキング
- 梱包
- 出荷
など、在庫数だけでなく作業そのものを管理するケースがあります。
高度な倉庫作業管理が必要であれば、一般的な在庫管理システムではなくWMSが適している可能性があります。
在庫管理システムとWMSの違い
在庫管理システムは、在庫数量や入出庫履歴を管理することを中心とします。
WMSは、倉庫内での作業をより細かく管理します。
| 項目 | 在庫管理システム | WMS |
|---|---|---|
| 主目的 | 在庫数量・履歴管理 | 倉庫作業の効率化 |
| 入出庫 | 対応 | 対応 |
| 棚卸し | 対応 | 対応 |
| ロケーション | 対応可能 | 重要機能 |
| ピッキング | 簡易対応の場合あり | 詳細管理 |
| 作業指示 | 限定的 | 重要機能 |
| 大規模物流 | ケースによる | 向いている |
在庫管理システムで十分なのに大規模WMSを導入すると、費用や運用が過剰になる可能性があります。
反対に、高度な倉庫業務を簡易システムだけで管理しようとすると機能不足になります。
無料の在庫管理アプリ・Excelとクラウドシステムの違い
無料アプリやExcelは、小規模な在庫管理を始める方法として有効です。
数十点の商品を一人で管理する程度であれば、高額なシステムは必要ありません。
無料サービスを利用するときは、
- 商品登録数
- 利用人数
- 履歴保存
- CSV
- 権限
- 広告
- バックアップ
- サポート
などの制限を確認します。
「無料だから悪い」ということではありません。
自社の規模と必要機能に合っているかで判断してください。
既製クラウドを比較するときの確認事項
複数サービスを比較するときは、機能一覧だけではなく、実際の運用条件をそろえて比較します。
例えば、
- 商品数
- 倉庫数
- 店舗数
- 利用者数
- 月間入出庫件数
- ロット管理
- バーコード
- CSV
- POS・EC連携
- 帳票
- データ移行
- サポート
です。
同じ条件で見積もりを取得しなければ、単純に価格だけを比較することはできません。
クラウド在庫管理システムの費用を比較する
クラウド型の費用は、サービスによって大きく異なります。
主な費用項目は、
- 初期設定
- 月額・年額利用料
- ユーザー追加
- 拠点追加
- オプション
- API
- データ移行
- 導入支援
- 周辺機器
などです。
一方、個別開発では開発費と保守費が中心になります。
費用を比較するときには、初年度だけではなく、3年程度使用した場合の総額で比較することも有効です。
Mactism Quick Pack 在庫管理の費用目安
マクティズムのMactism Quick Pack 在庫管理では、公開している目安として次の範囲を設定しています。
| プラン | 費用目安 | 主な対象 |
|---|---|---|
| テンプレート導入・軽微調整 | 150〜300万円 | Excel・紙管理から基本的な在庫管理へ移行 |
| 業務カスタマイズ | 300〜600万円 | 入出庫・棚卸・帳票・ロケーション等を自社業務へ調整 |
| 拡張・連携あり | 600〜1,200万円 | 発注・販売・基幹システム連携等を含む |
| 保守・改善 | 月3〜10万円 | 導入後の問い合わせ・軽微改修・改善 |
これは確定見積もりではありません。
必要な画面、帳票、データ移行、連携、独自処理などによって変わります。
低価格の月額在庫管理アプリを探している企業向けのサービスではありません。
一方、SaaSでは足りず、フルスクラッチほど大掛かりにはしたくない企業にとって比較対象になります。
クラウド在庫管理システムの導入手順
1.現在の課題を整理する
最初にシステムを選ぶのではなく、現在困っていることを確認します。
例えば、
- 在庫が合わない
- 棚卸しに時間がかかる
- Excelが複数ある
- 更新漏れがある
- 在庫確認の問い合わせが多い
- Accessが古い
- 拠点別在庫が見えない
などです。
可能であれば、時間や件数も記録します。
2.現在の業務フローを確認する
商品が入荷してから出荷されるまで、誰が何をしているか確認します。
システムだけでなく、
紙 → Excel → Access → 販売管理
といったデータの流れも整理します。
3.なくせる作業を確認する
システム化では、今の業務をそのまま電子化するだけでなく、不要な作業をなくせないか考えます。
例えば、
同じ情報をExcelとAccessへ二重入力している
という場合には、両方へ入力する前提でシステムを作るのではなく、そもそも二重入力をなくせないか検討します。
4.必要機能を整理する
必要機能を、
- 必須
- できれば欲しい
- 将来
に分けます。
最初から将来機能まで全部開発すると、導入費用と期間が増えます。
5.SaaS・テンプレート・個別開発を比較する
必要機能を整理した後で方式を比較します。
既製SaaSで十分ならSaaSを選択します。
合わない部分が限定的であればテンプレート型を検討します。
独自要件が非常に多い場合にはフルスクラッチを検討します。
6.データ整理・移行
商品マスタなどの既存データを確認します。
重複、表記ゆれ、不要データなどを整理します。
システム移行は「データをコピーするだけ」ではありません。
7.テスト
通常の入庫・出庫だけではなく、
- 返品
- 在庫移動
- 棚卸差異
- 商品削除
- 数量訂正
なども確認します。
既存システムと連携する場合は、実際のデータを使った接続確認を行います。
8.運用開始・改善
システムは公開して終わりではありません。
実際に利用した結果、
- 不要な項目
- 分かりにくい画面
- 追加したい機能
が見つかる場合があります。
運用を確認しながら改善します。
いきなり全社導入しない方法もある
複数拠点を持つ企業では、最初からすべての倉庫や店舗へ導入すると、調整範囲が大きくなります。
代表拠点で先行導入して運用を確認し、その後他拠点へ展開する方法もあります。
機能についても同じです。
最初は、
商品 + 入庫 + 出庫 + 在庫一覧 + 棚卸し
から開始し、その後、
バーコード → 発注 → 販売 → 基幹連携
へ広げることができます。
「小さく始める」とは、単に価格を下げることではありません。
最初に必要な範囲を明確にして、不要な機能を作らないことです。
将来の拡張性をどこまで考えるべきか
在庫管理システムを設計する際には、将来の事業拡大も一定程度考慮します。
例えば、
現在1倉庫 → 将来3倉庫
現在在庫管理だけ → 将来発注管理
現在Excel連携 → 将来基幹システム連携
といった計画です。
ただし、まだ実施するか分からない10年後の機能まで現在のシステムへ入れる必要はありません。
拡張しやすい構成を考えながら、今必要な機能から始めることが現実的です。
AI・需要予測は在庫管理の次の段階
近年はAIによる需要予測や発注支援も注目されています。
ただし、AIを導入する前に、在庫データ、販売データ、入出庫履歴などが一定の品質で蓄積されている必要があります。
在庫数が合っていない状態で高度な予測だけ導入しても十分な効果は期待できません。
まず在庫管理の基本を整え、その後、
- 在庫分析
- 発注支援
- 予測
- レポート自動化
などを検討する順序が適切です。
クラウド在庫管理システムは自社に最適か
クラウドは多くの企業にとって有力な選択肢ですが、すべての企業に同じ方式が適しているわけではありません。
判断するときには、次の4つを確認します。
-
1.標準業務へ合わせられるか
合わせられるならSaaSが有力です。
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2.独自業務がどの程度あるか
一部分だけならテンプレート型で対応できる可能性があります。
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3.既存システム連携が必要か
連携内容によってSaaSでは難しい場合があります。
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4.今後どこまで広げるか
将来の発注・販売・基幹連携も考慮します。
SaaSで十分か、Quick Packを検討すべきか
判断を簡単にすると、次のようになります。
標準的な在庫管理で十分 → SaaS・既製パッケージを優先して比較
SaaSでは合わない部分がある → その違いが、
項目・帳票・CSV・入出庫・ロケーションなど限定的 → テンプレート型カスタマイズを検討
業務全体が非常に独自 → フルスクラッチまたは基幹システム再構築を検討
この順番で考えると、必要以上に高額なシステムを導入することも、逆に安価なSaaSへ無理に業務を合わせることも避けやすくなります。
マクティズムが考えるクラウド在庫管理システムの選び方
マクティズムでは、システム開発会社だからといって、すべての企業へ個別開発を勧める考え方ではありません。
標準的なクラウドSaaSで十分解決できるのであれば、それを利用する方が合理的なケースがあります。
一方で、長年使用してきたExcelやAccessには、その会社特有の業務ルールやノウハウが含まれていることがあります。
それをすべて捨ててSaaSへ業務を合わせると、かえって現場の負担が増える場合があります。
そのため、
- 残すもの
- 直すもの
- なくすもの
- システム化するもの
を整理することを重視しています。
また、すべて一からフルスクラッチで作る場合でも、機能を増やすことより、現場が迷わず使えるシンプルなシステムを目指します。
Mactism Quick Pack 在庫管理が適しているケース
次のような場合には、Quick Packとの適合を確認する価値があります。
- Excel・Access管理からWeb化したい
- SaaSを試したが業務に合わなかった
- 今の帳票を一部残したい
- 独自のCSVを利用している
- 倉庫・ロケーション管理を追加したい
- 入出庫ルールを自社向けに調整したい
- 最初は在庫管理だけ始めたい
- 将来は販売・発注へ広げたい
- 基幹システムとは別に在庫だけ改善したい
要件がすべて整理できている必要はありません。
現在のExcelやAccess、帳票、困っていることを確認しながら、テンプレートで対応できる範囲と追加開発が必要な範囲を整理できます。
まとめ|クラウド在庫管理は「クラウドにすること」より「業務に合うこと」が重要
クラウド在庫管理システムには、SaaS、クラウド上の自社専用Webシステム、テンプレート型開発など複数の形があります。
大切なのは、「クラウドだから導入する」ことではありません。
自社の業務に対して、最も無理なく継続できる方式を選ぶことです。
標準的な商品管理、入出庫、棚卸しで十分であれば、既製のSaaSが有力です。
既製サービスへ業務を合わせても問題がなければ、無理にシステムを開発する必要はありません。
一方で、
- ExcelやAccessに独自業務が蓄積している
- SaaSの標準項目では不足する
- 自社帳票が必要
- 特殊なCSVを利用している
- 複数倉庫の独自運用がある
- 既存システムとの連携が必要
といった場合には、テンプレート型カスタマイズ開発が選択肢になります。
さらに大規模で独自性の高い業務であれば、フルスクラッチや基幹システム再構築を検討します。
重要なのは、最初に製品を選ぶことではありません。
現在の在庫管理業務を整理し、
- 「なぜ在庫が合わないのか」
- 「なぜ棚卸しに時間がかかるのか」
- 「どこで二重入力しているのか」
- 「何を残し、何を変えるべきなのか」
を確認することです。
そのうえで、SaaS、パッケージ、テンプレート型、フルスクラッチを比較すれば、必要以上に高額・複雑なシステムを選ぶリスクを減らせます。
マクティズムでは、Excel、Access、紙の管理方法を確認し、既製SaaSで十分なのか、Mactism Quick Pack 在庫管理が適しているのか、より大規模な開発が必要なのかを整理するところから相談できます。
まだ「システムを開発する」と決めていない段階でも構いません。
現在の在庫管理方法をもとに、クラウドSaaS・テンプレート型・個別開発のどれが適しているか確認することが、失敗しにくい在庫管理システム導入の第一歩です。
現在のExcel・Access・紙の在庫管理が、既製SaaSで対応できるのか、テンプレート型のカスタマイズが必要なのかを確認したい場合は、現在の管理方法から相談できます。
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在庫管理をExcelで続けていると、入出庫履歴、棚卸、在庫差異、複数人利用で限界が出やすくなります。Excel修正だけでなく、在庫管理システム化も相談できます。